
- パブリッシャーにとって重要なのはユーザーのログインを維持することで、AmazonやAppleなどのアカウントを利用し、簡単な手順でユーザーにログインしてもらう方法の実装が効果的。
- ログイン時に特典を与えユーザーに付加価値を提供し、認証ユーザーの割合を増やす取り組みや、登録ウォールの除去など、ユーザー体験の向上も必要に。
- メールだけに頼らず、IPアドレスやデバイスIDの収集を通じて、ファーストパーティデータのキャッシュを構築し、ユーザー認証を強化する戦略も不可欠となる。
2024年、多くのパブリッシャーにとって何よりも重要なのはユーザー認証だが、これはメールアドレスを取得するほど楽ではない。
取得しようとしているのがメールアドレスであれ、ユーザーのIPアドレスやデバイスIDであれ、パブリッシャーはそうした情報を一意識別子に変えている。サードパーティCookie廃止後、一意識別子を利用すれば、個別ユーザーのアイデンティティがわかる属性情報やオーディエンスセグメントを再び寄せ集めることができる。
重要なのは認証を維持すること
しかしながら、一意識別子があったところで、肝心のユーザーがいつもアカウントにログインしていたり、同じブラウザやデバイスからアクセスしていなければ意味がない。ウェブサイトへのアクセスにおいて、ブラウザやデバイスが変わったり、違うエントリーポイントを使ったりすると、ユーザーがサインインしなおさなければならない可能性がでてくる。もし再度サインインしなければ、別のブラウザで集めた当該ユーザー情報は基本的にすべて失われてしまう。
あるメディア幹部A氏が匿名を条件に、「実際にログインしている人以外に関して、真のファーストパーティデータが本当に存在するとは決して思っていない。というにも、サードパーティCookieが廃止されただけでなく、すべてのブラウザがファーストパーティCookieの効力を弱めてきたからだ。再度アクセスした人が7日前にアクセスした人と本当に同一人物であるかどうかをパブリッシャーが知るのは実に難しい」と話してくれた。
2024年のユーザー認証で特に注目されているのは、「単に新たなメールアドレスを数多く獲得すること」だけでなく、「その認証を維持すること」である。
とはいえ、本件でインタビューしたパブリッシャー関係者5名の話によると、各社の対応はさまざまだ。抵抗の軽減やログインしたくなるような動機を増やそうとしているパブリッシャーもあれば、IPアドレスやデバイスIDのような個人を特定できる情報を収集して、ログインステップそのものを回避しているパブリッシャーもある。
方法1:ワンステップ・ログインを実装する
サロン(Salon)、スノープス(Snopes)、TVトロープス(TVTropes)のCROを兼任するジャスティン・ウォール氏によると、現在のところ、TVTropes.orgの月間総ページビュー1億5000万件のうち5%が絶えずログインしているという。つまり、メールアドレスでアカウントを作成したことを意味する。しかし2024年の目標は、サイト総訪問数の約80%を占める、SafariとChromeの両ブラウザで、そのシェアを約10%まで伸ばすことだ。これは、TVトロープスの総トラフィックの約16%から17%は認証されたものだということを意味するが、「その数字が20%もあれば、言うことはない」と同氏は説明する。
たとえばAmazonやApple、Facebook、Googleのアカウントを利用してサインインするようなシングルステップ・サインインは、ウォール氏のチームが2024年に目指している主流の方法である。ただできるだけ多くのメールアドレスを獲得し、アカウントがどのブラウザでも有効であり続けるように努める。
「ユーザーにとって、ブラウザからの誘導の方が、パブリッシャーからの誘導よりも何かと楽な気がする。特に深く考えずに鵜呑みにしやすいだろう」とウォール氏。「しかし、基本的にはいずれの場合も、ユーザーが手軽にログインし、メールアドレスを提供し、そこから我々が自分たちでUID2.0(ID)を生成可能という点では同じだ」。
Appleでサインインしたユーザーが、「メールアドレスを隠す」を選択し、本当のアドレスの代わりに偽のメールアドレスを使用したらどうなるのかはわからない。この場合、理論上、UID2.0のIDは役立たないことになる。ウォール氏はこのようなケースに関する詳細な情報は明らかにしなかった。
先述のA氏は、2024年の同社経営陣からの指示は、いかにして人々にログインさせるかを見極めることだと語った。人々がニュースの見出しにつられて、SNSの投稿から飛び込んでくるだけでも構わない。A氏によれば、同社のポートフォリオでは、オンラインセッション全体の約20%が認証済みユーザー、つまり、自分自身のアカウントでログインしている読者によるものだという。
「ニュースレターのメールアドレスを持っているからと言って、その人が実際にログインしていない限り、誰だかわかるわけではない」とA氏。さらに、2024年の目標は、同じ属性を持つログインユーザーの集団を増やすことだが、目指す割合はこれといって設定していないと付け加えた。
さらに同社では、GoogleとFacebookのワンステップ・サインインのオプションだけでなく、マジックリンクもテストしている。マジックリンクとは、アカウントのパスワードを覚えていないユーザー向けに仮のコードをテキストやメールで送る仕組みだ。もし誰かがマジックリンクを使い、テキストもしくはメールでコードを受け取った場合、たとえばそのユーザーには2つの異なる識別子が与えられることになるのかなど、実際にどうなるかは不明だ。
A氏の話では、そうしたユーザーが再ログインするたびに、(たとえば「アメフトのスーパーボウルでは、どのチームを応援しているか」など)話題のニュースに関連した当たり障りのない質問をすることで、ユーザープロフィールの構築を進めることが可能になる。これはユーザーに関する情報を少しでも増やすために考えられた仕組みであり、ユーザーが回答を思わず躊躇するような個人情報について図々しく尋ねなくても、ユーザーがどのオーディエンスセグメントや属性に分類されるのかを判断するのに役立つ。
方法2:ユーザーに飴を用意する
ログインの時点で付加価値を与えると同時に、ユーザーにその付加価値を認識させることで、認証ユーザーの割合を増やそうと取り組むパブリッシャーもいる。
「サイトにアクセスするユーザーのうち、プラットフォームにログインして認証を受けるユーザーの割合は非常に重要だ。というのも、ファーストパーティデータの量が増え、代替IDの信頼性が高まるからだ」。そう話すのは、アンワインドメディア(Unwind Media)で、プログラマティックの収益と戦略を担当するシニアバイスプレジデントのエムリー・ダウニングホール氏だ。同社は、ソリティア(Solitaire)のオンラインゲーミングサイトを2つ所有している。同氏は、パブリッシャーの平均月間ページビューのうち、どのくらいがログインユーザーによるものなのかについては明らかにしなかった。[続きを読む]
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