
- アテンション指標の活用とリテールメディアネットワークの成長が、エージェンシーがメディア事業を強化する動きを加速させている。
- クリエイティブや制作での収益が減少しているため、エージェンシーはメディア事業の拡大を図っている。
- クライアントの課題解決にクリエイティブだけでは限界があるため、メディア戦略の統合が求められている。
どれほど優れたクリエイティブでも、それが適切なメディアに掲載されなければほとんど効果を発揮しない。
逆に、最適なメディアを使っても、クリエイティブがお粗末なら広告費はまったくの無駄になりかねない。
このところ、エージェンシー業界全体で上記のようなメディアとクリエイティブの関係性が、かつてないほど真実味を帯びている。実際、クリエイティブショップがメディア側のサービスを追加したり強化したり、あるいはメディアエージェンシーがクリエイティブエージェンシーなどと連携してフルサービスに回帰するといった傾向があちこちで見られる。
米DIGIDAYはすでに15ヶ月前、この傾向について「ローファイなリバンドル(不完全な束ね直し)」が迫っていると報じた。
要因1:アテンション指標の台頭
この潮流の背景にはいくつかの要因がある。そのひとつがアテンション指標の活用で、これはクリエイティブとメディアに貴重なインサイトを提供する。さらに、リテールメディアネットワークの成長もエージェンシーがメディア事業を強化する動きを加速させている。しかし、この動きの広がりを後押しするのは、ときに天の配剤であり、「コネクション」であるようだ。
たとえば、メディアショップのクロスメディア(Crossmedia)とクリエイティブエージェンシーのジョーン(Joan)は以前から非公式に人材交流を行う間柄だったのだが、昨夏、正式にジョーンXメディア(Joan x Media)を立ち上げた。ジョーン社内に設置されたこのフルサービス部門は、すでに新規のクライアント(社名は非公表)を獲得しているという。また、クロスメディアとジョーン両社のクライアントとして以前から取引関係にあったS&Pグローバル(S&P Global)とも連携している。
クロスメディアの共同設立者でCEOを務めるカム・アスガー氏はこう話す。「リサ(ジョーンのリサ・クルーニーCEO)と私は以前から、私たちが『広告の原罪』と呼ぶところの問題を正したいと考えてきた。メディア部門が社屋を去り、クリエイティブとメディアが分離されることに起因する問題だ。実際、クリエイティブ戦略とメディア戦略はしばしば別々に策定される。いっしょに立てられることの方が珍しく、目的別の扱いだ。一方で、メディアにはアッパーファネルとローワーファネルがあり、ファネル全体を俯瞰する包括的な思考が必要とされる」。
クルーニー氏もこう言い添える。「私たちは統一的なプロセスの構築を進めている。ジョーンXメディアの扉をくぐるクライアントには、メディア運用とクリエイティブ運用を切り離さず、単一の戦略的な運用施策を提案する」。
要因2:「制作」で稼げなくなったエージェンシー
独立系メディアショップのレフトオフマディソン(Left Off Madison)を創設し、CEOを務めるロブ・ダグラス氏は、「各社がメディア事業を拡大する傾向は、おそらく必要に迫られた結果でもある」と述べている。エージェンシーにとって、クリエイティブや制作で稼ぐのが難しくなっているからだ。「クリエイティブオンリーのエージェンシーを利用するクライアントから『メディアもやってくれるのか』と聞かれても、現状、大抵のエージェンシーは『否』と答える」。
こうした事情を背景に、ダグラス氏のレフトオフマディソンをはじめ、独立系のメディアショップが同じく独立系のクリエイティブショップと戦略的な連携を試みるケースが増えている。たとえばダグラス氏は、同氏の元同僚で現在はクリエイティブショップのマルカ(Malka)で共同CEOを務める人物と、レフトオフマディソンの社長を引き合わせたいと述べていた。マルカは現在、メディアの扱いがないという。
「マルカにホワイトラベルソリューションを提案できるかもしれない」とダグラス氏は話す。「もしそうなれば、ゆくゆくは十分な成功事例を携えて、彼らは独自のメディア事業を立ち上げるだろう」。
独立系クリエイティブ・エージェンシーのフェレビーレイン(FerebeeLane)が2017年にケイティ・ドリッグス氏を迎えてメディア部門を立ち上げたのは、その好例と言えるだろう。そして7年後の現在、ドリッグス氏は3人のフルタイムスタッフとインターンを抱えている。しかも同氏によると、いまやフェレビーレインはあらゆるメディアサービスを包括的に提供できるという(インフルエンサー関連の仕事はPR部門が担当)。比較的小規模なエージェンシーとしては珍しいことだ。一方で、成長の余地は常にあるともドリッグス氏は述べている。特に運用型広告の内製化(現在はマネージドサービスで提供)やクロススクリーンの効果測定などを想定しているようだ。
「重複する部分が分かればメディアバイイングの効率化につながる」とメディア担当バイスプレジデントに就任したドリッグス氏は話す。また、フェレビーレインのメディアサービスを利用するクライアントは当初の3社から現在では11社に増え、媒体費も当初と比べて380%増加したという。[続きを読む]
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