
広告業界はこの2年以上、多様性、平等性、包摂性(DE&I)に関してさまざまな取り組みと公約を発表してきた。しかし、アメリカ広告業協会(4A’s)が出した新しい報告書によると、業界はまだDE&Iにおいて道半ばであるようだ。
しかし、アメリカの大手エージェンシーの最高ダイバーシティ責任者たちは、企業の多様性関連のデータが示す状況はDE&I全体の動きからするとほんの一部だと言う。結局のところ、DE&Iとは現在も、そして今後も進行中の作業なのだ。
今年6月、4A’sは2023年のエージェンシーの多様性に関する調査報告を公表した。それによると、2021年にはエージェンシーのリーダー役職の73%が白人であったが、2022年にはその数字は90%に跳ね上がったことを明らかになっている。この数字は、2020年5月のジョージ・フロイド氏の事件の影響を受けてのDE&Iの取り組みの高まりが、それ以降なぜ徐々に消えていっているのか、問いかけるものである。
多様性の統計だけが全てを語るわけではない
「最近の4A’sによる2023年のエージェンシー・多様性調査の結果よりも、業界は改善できる」と、4Asの人材、公平性、学習ソリューション部門エグゼクティブバイスプレジデントであるターリシャ・ウィリアムズ氏はメールで述べた。「今やエージェンシーは、DE&IB(DE&IにBelonging[帰属]を足した略)に関する企業としての約束を定義し、維持することが必要だ。そして、目を離さないように進歩を追跡し続けることも必要だ」。
しかし、ハヴァス(Havas)、ピュブリシスグループ(Publicis Groupe)、電通を含む大手エージェンシーのダイバーシティ関連の役員たちにとって、多様性の統計だけが全てを語るわけではない。また、2年は業界全体を変革するには十分ではない。
「これまで組織的かつ歴史的に日々の生活に刻み込まれてきた(問題)を、2年間のグローバルパンデミックのなかで解消できるはずはない」と、米DAZNピュブリシスグループ(Publicis Groupe U.S.)の最高ダイバーシティ責任者であるジェラルディーン・ホワイト氏は言う。
業界はDE&Iの取り組みに疲れを感じている?
米国では、マッドメン(「Mad Men」60年代のニューヨークの広告業界を描いた人気テレビドラマ)時代のマディソン通り(マンハッタンの広告業界の中心地)の広告を起点として、広告における多様性の取り組みの進歩は遅く、険しいものだった。2020年のパンデミックとBlack Lives Matter運動のピーク時に、業界の多様性の盲点が明るみになり、多様性に対する業界の焦点を再活性化させた。
しかし、それ以来、この問題に対する取り組みは減少してきている。DE&Iの公約にも関わらず、メディア企業は主に白人を採用している。4A’sの調査によれば、ほとんどのエージェンシーは白人の経営者によって所有されているか、運営されているという。
チーフエクイティオフィサーたちは、表面的には業界がDE&Iの取り組みに疲れを感じているように見えると言う。しかし、多様性関連の統計や調査、記事を通して自分たちの業界の進歩をモニタリングするなかで、問題は数字が全てを表すものではないとも言う。「業界は多様性関連の統計が、どのような文脈で理解されるべきかを考え、長期的な目標を追求するべきだ」と、彼らは呼びかける。
「(DE&I関連の)仕事は頻繁に話題になり、多くの人の思考にのぼるようになった。そのような時期こそ、(DE&Iを)話題にすること、もしくは話題になる頻度自体が実際的な進歩と誤解することがある」と、電通アメリカズ(Dentsu Americas)のチーフエクイティオフィサーであるクリスティーナ・パイル氏は述べた。つまり、エージェンシーが取り組みについて話題にしないからといって、取り組みが進行していないわけではないということだ。数字はCEOやビジネスリーダーに進歩を伝えるのに役立つ。「しかし、人々の感情や従業員の感情を測定することも重要だ」と、同氏は付け加えた。
The post 広告業界の DE&I は進んでいるのか? 大手エージェンシーダイバーシティ担当役員が語る現状 appeared first on DIGIDAY[日本版].
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