
- Pentium、PowerBook、Blackberryなど著名ブランドの命名に関与したデヴィッド・プラチェック氏に、AI時代における命名のあり方と良い名前の要素を聞いた。
- プラチェック氏はAI時代には、人々が親しむバランスの取れた名前を選ぶべきと助言し、レクサスのようなハードさとソフトさを兼ね備えた響きを例に挙げる。
- また同氏はAIのグローバルな広がりを強調し、20の異なる言語を分析して、世界中で使われる名前を考案するための基盤を構築している。
新会社や新製品の命名。それこそが、レキシコン(Lexicon)のCEO/創業者デヴィッド・プラチェック氏が何十年にもわたり、やってきた仕事だ。氏が40年前に創業したエージェンシーは、新奇からアイコンへと進化した無数のブランドのブランド名を生み出してきた。
ペンティアム(Pentium)やパワーブック(PowerBook)などの馴染みのある名前だけでなく、ブラックベリー(Blackberry)やソノス(Sonos)、アジュール(Azure)、オキュラスゴー(Oculus Go)といった比較的最近のものも、同社が名付け親だ。また、テック関連に留まらず、スバルの自動車、アウトバック(Outback)およびフォレスター(Forrester)も、EV(電気自動車)のルシード(Lucid)も同社が名付けた。さらには、インポッシブルバーガー(Impossible Burger)やエンバシー・スイーツ(Embassy Suites)、スウィフター(Swifter)、ファブリーズ(Febreze)などなど、ほかにも無数の名前を考案している。
いま、巷で独自のAI語彙が急速に増えているなか、DIGIDAYはプラチェック氏に取材し、AIという新進分野をどう見ているのか、良い名前の要素とは、そしてAI関連の名称における最近のトレンドについて語ってもらった(氏はちなみに、レキシコンは現在、AIスタートアップ3社と仕事をしているが、その仕事において擬人的なものにはいっさい関わっていない、とも語った)。
プラチェック氏いわく、「IBMがSystem/360と共に登場し、突如、処理能力と言われるものが広まったのと同じ構図だと考えている。いまのAIを巡る状況はその乗数的なものだと」。
なお、発言は短くかつ明快になるよう編集してある。
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――過去のテック分野とは明らかに異なる、AIに相応しい名前の響きとは?
スタートアップたちには、バランスの取れた名前を選ぶようにと助言している。耳当たりがあまりに良くないものは避けたい。ChatGPTが出してくる候補には、いわばノイズが多すぎる。しかも、一聴で記憶に残る音の組み合わせ、というわけでもない。わかるだろうか? だから、「AIが選んだこんな感じで行きたいのですが」と言われたとしたら、我々としては、それとは違うものを薦める。
この先、世に出て欲しいと我々が願う名前は、たとえばレクサス(Lexus)のようなものだ。レクサスの響きにはハードさがある一方、ソフトさもある。つまり、テクノロジーや信頼性という、かちっとした感じがありながら、親しみやすさ、使いやすさ、滑らかさも感じられる。それと、我々はこの先、新たな造語作りになおいっそう努めることになると思う。AIは新たな概念だからだ。
ただ、いずれも人々が馴染めるものにしたい。新しい概念であることは伝えたいが、同時に人々が馴染めるものにしたい、と考えている。
――何が人々に響き、何が響かないのかを知るために、何らかのマーケットリサーチをしたことは?
音象徴という言語学の分野については、数多くリサーチしてきた。音象徴の研究によれば、素晴らしいことに、英語のアルファベットの音にはそれぞれ、何かしらを連想させるものがある。そして、すべてではないが、その多くには基本的にグローバル性がある。
これを説明するのに、私はよく「V」の音を例に使うのだが、パリでもブルックリンでも、「V」の音は生気、動き、そしてどことなく活力的を想起させる。大胆や勇敢さをどことなく連想させる音と言ってもいい。
「コルベット(Corvette)」が好例だ。高性能を表すのにぴったりの名前と言える(中略)。そうしたアルファベット個々の音に関して統計的に信頼できる情報を同定するべく、我々は4年にわたり、9カ国を股にかけて調査を実施した。弊社にあるようなデータベースを持っている会社は、世界中で我々だけだろう。
――巨大な言語モデル、AIスタートアップ、AI製品など、さまざまな分野の名前には興味深いものがある。いま現在、そこに何らかのトレンドは? また、製品と会社で、名付ける過程に違いは?
社名にはそれなりの柔軟性が不可欠だ。社名はいわば大きな傘であり、多くのものに使われるし、その下にある数多くの製品をサポートするものでなければならない。かなりシンプルな、至ってストレートなものの場合もあるし、製品ラインによっては、すべてを一言で表すものの場合もある。あるいは、ポートフォリオの中で最も重要なブランド名の場合もある(中略)。
いずれにせよ、社名では、どちらかと言えば堅い、進歩的なものが好まれる。製品名では一方、たとえばラマ(LLAMA)といった、軽い遊び心を感じさせるものや、ノースポール(NorthPole)といった任意的なものでもいい。[続きを読む]
The post Pentium、Blackberry、Azureの「名付け親」が語る、 AI 時代の命名法と良い名前の要素 appeared first on DIGIDAY[日本版].
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