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メディア 業界を襲うM&Aの波。実現したら面白いタッグとは?

記事のポイント

  • 実現したら面白いタッグ1:Netflix + Roku。NetflixがRokuを買収することで、広告付き無料ストリーミングTV(FAST)市場への進出や広告枠の売却機会が拡大する可能性がある。
  • 実現したら面白いタッグ2:ニューヨーク・タイムズ+CNN:実現の難しさや資金調達の問題があるものの、ニューヨーク・タイムズがCNNを買収すれば双方が新たな報道メディアや報道ソースを提供し合うことが考えられる。
  • 実現したら面白いタッグ3:YouTube+ランウェイ。Google(YouTube)がジェネレーティブAI動画スタートアップのランウェイを買収することで、動画制作ツールを強化し、競合他社に対抗できると期待される。

パラマウント(Paramount)の親会社、ナショナル・アミューズメンツ(National Amusements)が身売りの危機に瀕しているという。それがスカイダンス・メディア(Skydance Media)の手中に落ちるにせよ、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(Warner Bros. Discovery:以下、WBD)の手中に落ちるにせよ、この身売りが引き金となって、M&Aの新たな波がメディア/エンタメ業界を襲う可能性は十分にある。

そうしたわけで今回は、どの企業と企業が、どんな理由でタッグを組む可能性があるのかを推測してみたい。このマッチメイクを行うに当たり、これまでA+Eネットワークス(A+E Networks)やMTVネットワークス(MTV Networks)、タイム・インク(Time Inc.)を渡り歩いてきたベテランのポール・グリーンバーグ氏にサポートを依頼した。同氏は今回のパラマウント買収の噂について、有益な補足説明を提供してくれた。

「どちらに転ぶのかは一か八かだ。金利の高騰と規制当局の監視により、大型取引の成立が難しくなるのは、あり得ることだからだ」と、グリーンバーグ氏は語る。

それからもうひとつ。以下の組み合わせは、両者の企業戦略のみをその根拠としており、それぞれの財務状況はほぼ考慮に入れていないという点も、含んでおいてほしい。もっとも、負債を抱えているにもかかわらず、WBDがパラマウントの買収に名乗りを上げていることを考えると、財務状況に関する問題は少し脇へ置いておいてもいいように思える。それでは、さっそく本題に入っていこう。

WBD + NBCユニバーサル

すでに述べたように、WBDはパラマウント買収の有力候補に挙がっている。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)が1月10日に報じたところによると、スカイダンスも現在、パラマウントの親会社であるナショナル・アミューズメントを全額現金で買収するという提案をまとめているという。そこで、WBDがパラマウント買収のチャンスを逃すと仮定してみよう(その方が面白いからだ)。

WBDが負債を抱えていることを考えると、別の巨大メディア企業の買収に乗り出して深みにはまるのは避けるのが賢明だろう。しかし、ケーブルTVネットワークビジネスの現状と、マックス(Max)でのスポーツ中継配信に向けたWBDの動きを考えると、WBDがパラマウントを欲しがる大きな理由のひとつは、最高級のプレミアムTV番組であるNFLの放映権の獲得だろう。

WBDがパラマウントの代わりに獲得に向けて動くとしたら、それはフォックス(Fox)だろう。フォックスを手に入れれば、WBDはトゥビ(Tubi)と、広告付き無料ストリーミングTV(FAST)市場への足がかりを得ることになる。だが、(オーナーの)マードック家がフォックスを簡単には手放さないだろう。WBDもさらなるケーブルTVニュースネットワークの受け入れに魅力を感じるとは限らない。

となると、残るのはNBCユニバーサル(NBCUniversal)だ。ワーナー・ブラザースとディスカバリーの合併以来、コムキャスト(Comcast)を親会社とするNBCユニバーサルも、パラマウントと似たような立場に置かれている。どちらも、大きいことは大きいが、そこまで大きくはない。今後もNBCユニバーサルを手放さない可能性はあるコムキャストだが、その一方で、有料TVプロバイダーのチャーター(Charter)とのジョイントベンチャー、ズーモー(Xumo)でCTVプラットフォーム分野へも参入している。ストリーミングがリバンドリング時代に突入していることを踏まえると、コムキャストがNBCユニバーサルを売却して、自社のレガシープラットフォーム事業のストリーミング版の構築に再投資するための資金の調達を望むようになる可能性はある。

Netflix + Roku

ストリーミング広告に何より重要なのは、スケール(規模)だ。Netflixの広告付きサービスは成長過程にある。しかし、その一方で、Amazonプライム・ビデオ(Amazon Prime Video)の参入でハードルが上がったことにより、Netflixはインベントリー(在庫)を迅速に追加する必要に迫られている――そう、FAST(広告付き無料ストリーミングTV)だ。

Roku(ロク)を買収すれば、NetflixはRokuチャンネル(Roku Channel)のFASTサービスを獲得することになり、これで広告サプライを補完できる。また、Netflixはこれによって、広告付きプランの利用登録者に向けたサービスをより充実させることもできるし、新規利用登録者のための進入路をつくることもできれば、既存ユーザーに解約を思いとどまらせ、サブスクリプションの更新へと導くひとつの方法も確立できる。

「Rokuには良いチャンネルがある。勢いもある。レイオフも行われているようだが、総合的に見るとNetflixのようなところにはちょうどいい、非常に興味深い相手だと思う」と、グリーンバーグ氏は語る。

またNetflixは、相手がRokuなら、CTVプラットフォーム事業やプログラマティック広告購入プラットフォームのワンビュー(OneView)を通じて、その他のストリーミングサービスで広告枠を売る機会も得られる。おそらくこれと同じぐらい重要なのは、RokuのCTVプラットフォーム事業を獲得すれば、Netflixはストリーミングバンドラーの仲間入りを果たし、ストリーミングサービスの雄の座に上り詰めるのに使ったアグリゲーター的アプローチの再現を狙えるということだ。

対するRokuはどうかというと、利益を出すのに苦労しており、そのハードウェア事業は停滞が続いている。Netflixの収益性なら、こうしたマイナスを埋め合わせられる。また、NetflixがRokuとタッグを組み、先日発売されたRokuのスマートTVの次世代機を擬似ゲームコンソールへと仕立て上げることができれば、立ち上げたばかりの自社のゲーム事業をTV画面に順応させられるだろう。

ハースト + A+Eネットワークス

M&Aの都合のよいカモといえば、中規模のケーブルTVネットワーク事業だ。この架空の結婚を語るに足るものにしているもの――それは、両者はすでに婚約しているのも同然であるという事実だ。A+Eネットワークスはハーストとディズニー(Disney)のジョイントベンチャーなのだから。

その一方で、これが実現しないことを裏付ける理由もある。まず、ハーストはディズニーにその持ち株を売らせる必要がある。ディズニーCEOのボブ・アイガー氏は、主力外の資産の売却にオープンな姿勢を示しているが、それ以上に重要なのが、同氏が自社のTVネットワークの一部をA+Eネットワークスにスピンオフする道を探っているといわれている点だ。

また、取り決めにより、もしハーストがA+Eネットワークスを買収しようとすれば、それが訴訟に発展する恐れもある。ミルクの大部分をすでに所有しているハーストが、わざわざ牛を買い取ろうとする理由などあるだろうか? さらには、ローカルTV局の運営や雑誌の発行といった事業をすでに手がけるハーストが、ケーブルTVネットワーク事業への参入を望む理由などあるだろうか?

「『ケーブルネットワークビジネスにどうしてもいま参入したい』という部外者などいるだろうか? そうは思えない」と、グリーンバーグ氏は語る。

確かにそうかもしれない。だが、ハーストやコンデナスト(Condé Nast)のような古くからのパブリッシャーが、ストリーミング事業の構築にさほど積極的になっていないというのが、どうにも腑に落ちないのだ。筆者は当初、コンデナストとAMCネットワークス(AMC Networks)の組み合わせで持論を展開してみるつもりだったが、昨年起きたコンデナスト・エンターテインメント(Condé Nast Entertainment)の事実上の消滅から判断すると、この推測は見当違いだったようだ。そうしたわけで、ハーストとA+Eネットワークスの既存の企業関係に注目して、この組み合わせを選ぶことにした。また、ストリーミング事業の構築においても、ハーストはA+Eネットワークスの番組ライブラリーを活用すれば、自社のIPを拡大できるはずだ。

グリーンバーグ氏も筆者の想像を気に入ってくれており、この組み合わせを三角関係へと発展させることで、さらに一枚上を行ってくれた。

「ハーストがそのビジネス領域を広げたいと思っているなら、A+Eネットワークスだけでなく、AMCネットワークスも合わせて引き入れるだろう」と、グリーンバーグ氏は語る。AMCネットワークスも不振にあえいではいるが、台本ありの番組に強い同社なら、A+Eネットワークスの台本なしのラインアップを補完できるだろう。そこまで魅力的ではないかもしれないが、これが想像するだけで面白い組み合わせであることは確かだ。[続きを読む]

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