
- ドラッグストア大手のツルハホールディングスは、日本の流通小売業として初のデータクリーンルームを構築し、異業種とのデータ連携を実現しようとしている。
- 店舗を「情報発信基地」と位置づけ、地域や顧客とより深くつながる手段としてリテールメディアを活用している。
- 広告主にとっても信頼できる情報源を目指し、セルフオーダー型広告配信の構想なども視野に入れている。
リテールメディアは、新しい広告の形であるとともに、企業と生活者の関係を変える手段になりつつあるのかもしれない。
日本でもその動きは着々と広がっており、その先陣を切っているといえるのがドラッグストア業界だ。ID-POSデータを活用した外部メディアへの広告配信や、店舗に設置されたデジタルサイネージ、アプリによるコミュニケーションなど、複数のチャネルを連動させた施策が進んでいる。なかでも、業界最大手のひとつであるツルハホールディングスは、ID-POS連動型広告、全国約1万台のデジタルサイネージ横断放映、1000万ダウンロードを超える公式アプリでの広告といった先進的な取り組みで存在感を示してきた。
そのツルハホールディングスが、リテールメディア戦略の中核として新たに構築したのがデータクリーンルームだ。2月5日に発表した「ツルハデータクリーンルーム」は、ユーザーのプライバシーを保護しながら購買データを安全に利活用できる、セキュアな環境の基盤となるもので、リテールメディア専用のデータクリーンルームは初の事例となる。
なぜいま、ツルハホールディングスは独自のデータクリーンルーム構築に踏み切ったのか。その背景と展望について、株式会社ツルハホールディングス 執行役員 経営戦略本部長 兼 情報システム本部長の小橋義浩氏と、5年以上にわたりリテールメディア事業を支援してきた株式会社アドインテ 取締役副社長 兼 COOの稲森学氏に話を聞いた。
「自社データだけでは足りない」 データクリーンルームを構築した背景
――まず、データクリーンルームを立ち上げた背景には、どのような背景や狙いがあったのでしょうか?
小橋義浩氏(以下、小橋):ツルハホールディングスはグループ全社で全国に2600を超える店舗があり、顧客の来店・購買データを活用したリテールメディアサービスをさまざま提供してきました。ただ、メーカーなど広告主の皆さんからすると、消費者が本当に求める情報を届けるには、我々の単独のデータだけでは十分ではない。そう気づいたものの、他社のデータと掛け合わせるには、お客様の貴重な情報を無防備にさらすわけにはいきません。匿名性を担保しながら、安全にデータを可視化・活用できる仕組みが必要だった。それが、我々にとってのデータクリーンルームでした。

小橋 義浩/株式会社ツルハホールディングス 執行役員 経営戦略本部長 兼 情報システム本部長。2005年に株式会社ツルハに入社。グループ会社での役員経験を経て、株式会社ツルハホールディングスの経営戦略本部長に就任。2019年にグループ公式アプリの開発を指揮し、以降はグループ全体のデジタルシフトを牽引。2020年から情報システム本部長を兼務し、2021年に執行役員に就任。現在は、ツルハグループAD広告をはじめとするリテールメディア事業や顧客データ基盤の整備など、グループのデジタルマーケティング全体を推進している。
稲森学氏(以下、稲森):データクリーンルームの構築については、小橋さんと1年ほど前から継続的に話をしてきました。昨年7月にリリースしたアプリ広告はありがたいことに常に満稿状態でしたので、次のステップに進むタイミングだと感じたのが秋頃です。とはいえ、小売企業の大事なデータが関わることですから、法務や関係各所と連携しながら慎重に進めてきました。
小橋:お客様にご迷惑をおかけしないか、データやIDを守って利活用していけるのかどうかを徹底的に確認しました。「これなら大丈夫」と確信が持てた上で、ようやくスタートさせることができました。[続きを読む]
The post ツルハ HD はなぜ独自で作るのか。小売主導のクリーンルームが生む顧客・広告主との新たな関係 appeared first on DIGIDAY[日本版].
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