
- マークアントワーヌ・バロワ氏は香水を芸術と捉え、光を感じる体験の創造を重視している。
- 同氏のブランド成功は、調香師カンタン・ビシュ氏との継続的な協業と職人技へのこだわりによる。
- バロワ氏は香水に精神的価値を求め、過剰消費ではなく持続可能な欲望のあり方を提案している。
マークアントワーヌ・バロワ氏は、自身のフレグランスを嗅いだ人に光を感じてほしいと考えている。ミラノデザインウィーク(Milan Design Week)でアートインスタレーションと共に発表された最新のフレグランスのアルデバラン(Aldebaran)について、同氏は「暗闇のなかに光を感じるというビジョンだ」と語った。「目が焼けるほどの眩しさだ」。
4月に発売されたアルデバランは、2016年にバロワ氏がフレグランスに進出して以来、7番目となる香水だ。同氏のすべての香水と同様に、この香水もジボダン(Givaudan)の調香師であるカンタン・ビシュ氏とのコラボレーションによって生み出された。2人は、真面目すぎて退屈に感じられることもあるフローラル、特にクラシックチューベローズというカテゴリーに「挑戦」するためにこの香りを考えついたという。「カンタン氏も私も安穏としていることには飽きるタイプだ。常に挑戦し、より高みをめざしたい」とバロワ氏は述べた。
バロワ氏はファッションデザイナーとして2009年にパリで事業を開始し、主にオーダーメイドのスーツとタキシードで常連客を得た。香水を作ろうと考えたのは、ある顧客からそう提案されたからというだけで、2016年に発売された最初のフレグランス、スパイシーなレザーノートのB683はわずか500本しか製造しなかったが、10年は在庫がもつと予想されていた。
しかし、実際には2カ月しかもたなかった。そして10年近く経った今、バロワ氏の香水の生産量は10倍に増加している。2024年に太陽のようなフローラルノートの「ティリア(Tilia)」を発売した際には、最初に5万本を製造し、2カ月後にさらに5万本を追加生産した。2019年に発売され、受賞歴のあるミネラルスエードノートの「ガニメデ(Ganymede)」は、年間20万本を売り上げていると、バロワ氏は推測している。
フレグランスはラグジュアリーファッションブランドにとって売上を牽引する存在となっており、シャネル(Chanel)やジャンポールゴルチエ(Jean Paul Gaultier)のようなクチュールメゾンにとっても、商業的に欠かせないプロダクトとなっている。多くのブランドが大衆向けに最適化された香りを展開する一方で、バロワ氏はオートクチュールと同等の職人技を香水に込めようとしている。彼の香水は1本170ドル(約2万4300円)から395ドル(約5万6500円)で、50カ国・450店舗で販売されており、現在では香水が事業全体の90%以上を占めている。
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The post 香水 で売上10倍に スター調香師×ストーリーテリングが築いた新ラグジュアリー appeared first on DIGIDAY[日本版].
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