
- X社CEOとしてのヤッカリーノ氏は、広告業界との緩衝材として機能していたが、実権はなかった。
- 広告主の信頼回復に向けた取り組みもあったが、マスク氏の過激な言動や訴訟戦略が足かせとなった。
- 肩書きの形式に意味がない現在、Xはメディア企業ではなくマスク氏の思想主導のテック企業になりつつある。
リンダ・ヤッカリーノ氏には肩書きがあった。業界で通用する決まり文句も、華やかな経歴も、申し分ないプロフィールも備えていた。ただし、同氏に欠けていたのは「コントロール」――少なくとも意味あるかたちでの支配権であった。
ヤッカリーノ氏の役割は、真の権力を持つことではなかった。見せかけのためのポジションだったのだ。燃えさかる現場でブランドをなだめ、「大人の対応」をするために据えられた、経験豊かなメディア幹部という“飾り”であった。しかしこれは、ただの敗北が決まった脚本を渡された話ではない。ヤッカリーノ氏自身も選択を重ねてきたのだ。
広告主が離れるなかで、ヤッカリーノ氏はX(旧ツイッター)を擁護した。上司であるイーロン・マスク氏の主張をなぞり、ときにはデータを歪曲し、責任を回避した。そして、倫理の一線をあいまいにする戦術にも積極的だったとされる。ヤッカリーノ氏はただの同乗者ではなかった。ときにはハンドルを握っていたのだ。
退任は時間の問題だった
当然のことながら、ヤッカリーノ氏の辞任は驚きではなかった。むしろ、「なぜこんなに時間がかかったのか」が問われるべきだった。2023年夏に着任して以来、同氏の仕事は企業を率いることではなく、ひたすら危機を封じ込めることだった――マスク氏の予測不能な言動と、それによって疎外された広告業界とのあいだに立つ「評判のバッファー」として。
しかし、バッファーは永遠に機能しない。2024年にXが正式にマスク氏のAIベンチャー「xAI」に統合されたことで、ヤッカリーノ氏のCEOとしての役割は、実質的に「創業者主導の巨大プロジェクトのなかのソーシャル部門」の責任者に格下げされた。
最後には、マスク氏の簡潔な反応が、ヤッカリーノ氏の実態を物語っていた。ヤッカリーノ氏がX上で退任を発表すると、マスク氏はその投稿に「貢献に感謝します」とだけ返信した。X社は同氏の退任についてのコメント要請に応じなかった。
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The post ヤッカリーノ 氏退任で見えた広告主の冷めた評価 「Xはいまだ一流ではない」 appeared first on DIGIDAY[日本版].
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