- 2023年11月からICOは英国内のパブリッシャーに対し、Cookie同意ポップアップに「全て拒否する」ボタンの設置を求め、30日以内の改善を指示。
- 多くのパブリッシャーは「全て拒否する」オプション追加による不同意率の増加が収益に大きな影響を及ぼすと懸念。
- 解決策として、非パーソナライズド広告や読者収入モデルへの転換などが検討されているが、いずれも有効打にはなっていない。
2023年11月、英国でトップクラスのトラフィックを誇るパブリッシャーが、データプライバシーのコンプライアンス維持を任務とする英情報コミッショナーオフィス（ICO）から警告を受けた。
ウェブサイトのCookie同意ポップアップが「PECR（プライバシーと電子コミュニケーションに関する規則）」と「GDPR（一般データ保護規則）」の要件を満たしていないという内容だ。
ICOは英国のトップサイト100以上に対し、サードパーティCookieの同意バナーを30日以内に更新し、「すべて同意」ボタンと同じくらい目立つように「すべて拒否」ボタンを設置しなければ、罰金が科されると警告した。
ユーザーの不同意率は顕著に増加する
しかし、メディア企業にとって、「すべて拒否」オプションを追加することは、単に短いコードを追加するということではない。「すべて拒否」の選択肢をオーディエンスに与えた場合の影響をテストしたパブリッシャー3社によれば、このような変更を行うことで、収益面に大きな影響が生じる可能性があるという。そして、ICOの警告は、英国で事業を展開するすべてのパブリッシャーに対し、この問題をどのように取り締まるかについての疑問を投げ掛けている。
インディペンデント（Independent）の最高データおよびマーケティング責任者、ジョー・ホルダウェイ氏は、「すべて拒否」の選択肢を加えてテストした結果、不同意率が約20％増加したと報告し、この結果は「収益化能力に重大な影響を与える」と述べている。しかも、その後のモデリングでは、不同意率はさらに増加し、業界全体で40～50％まで上昇するという結果が出たとホルダウェイ氏は補足している。ただし、正確な数字は不明だ。
ムーブメント・フォー・アン・オープンウェブ（Movement for an Open Web：以下、MOW）の共同創設者、ジェイムズ・ローズウェル氏は、「同意率が底を突き、パブリッシャーの収益に重大な影響を与えていると（EUのパブリッシャーから）聞いている」と話す。MOWは、巨大テクノロジー企業の制約から解放されたデジタルビジネスを支援するためにつくられた組織だ。
今回取材した3人のメディア幹部によれば、ICOはパブリッシャーと連携し、Cookie同意ポップアップをプライバシー規則に準拠させるための解決策を探ってきたという。ICOの広報担当者はメール取材に対し、「私たちはメディア企業を含む組織に、データ保護法の下、ウェブサイト利用者は自身の個人情報について真の選択肢と管理権限を与えられるべきだという文書を送付した。データ保護法を順守するには、どのような変更を加えればよいかを理解してもらうため、私たちはこれらの組織を支援している」と説明している。ICOの担当者から直接話を聞くことはできなかった。
なぜ「すべて拒否」が問題なのか
現時点では、「ICOが懸念しているように、『すべて拒否』を使用しているパブリッシャーは多くない。そして、それは当然のことだ」とホルダウェイ氏は話す。しかし、パブリッシャーの収益に重大な影響を与えることなく、プライバシー規則の要件を満たす解決策は今のところ存在しない。
「私たちは報道の自由を求めている。オーディエンスの収益化は（中略）プレミアムパブリッシャーにとって本当に重要なことだ。質の高いジャーナリズムには膨大な費用がかかるためだ。人々はこの問題に気付いていて、公平に扱われることを望んでいると思う。しかし、広告収入か読者収入のどちらかでオーディエンスを収益化しなければ、ビジネスとして成り立たない」とホルダウェイ氏は続ける。
ホルダウェイ氏によれば、インディペンデントはICOと連携しながら、2つの代替策をテストし、状況が改善するかどうかを確認しているところだという。1つ目の代替策は、コンテクスチュアル広告のような非パーソナライズド広告ソリューション（いわゆるCookieレスソリューションだ）への投資で、これはデジタル広告市場である程度広く採用される必要がある。
そして、もうひとつの代替策は、Metaが2023年に発表したような読者収入で、月額または年額のサブスクリプション料金と引き換えに広告のない体験を提供する支払い同意モデルだ。ただし、このモデルもEUの規制当局から難題を突き付けられている。
さらに、ホルダウェイ氏は、DevOpsチームのリソースが限られているため、ICOが承認する前に1つのソリューションにすべての労力を割きたくないと述べている。［続きを読む］
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