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Q&A: パブリッシャーを苦しめる可能性のある「 シーケンシャルライアビリティ 」とは?

アドテク業界の企業が破綻すると、かならずといっていいほど話題になるのがシーケンシャル・ライアビリティ(sequential liability)という用語だ。

7月に破産申請したアドテクベンダー、メディアマス(MediaMath)の場合も例外ではない。厳しい事業環境下、自社を守るシーケンシャル・ライアビリティ条項の必要性が叫ばれる一方で、アドテク業界に内在する構造的不公平性が浮き彫りになったといえる。財務基盤が強固な企業であればなんとか対処可能な取引上の債権回収問題は、脆弱な企業にとっては経営を脅かしかねないリスクとなる。

契約におけるシーケンシャル・ライアビリティ条項が注目されるのはなぜか。この商慣行が議論を呼んでいる背景に何があるのか、詳しく見ていこう。

――シーケンシャル・ライアビリティとは?

シーケンシャル・ライアビリティ(順次債務)とは、企業が、ある取引における製品やサービスの対価である債権(売掛金)を回収できるまで、同じ取引にかかわる自社の債務(買掛金)を支払わなくてよいという履行義務の免責を意味する。サプライチェーン上の一企業が債務を支払えない場合、関連の支払義務が同じチェーン上の次の企業に順送りされ、当事者が次々と債務の支払いを免れる事態を招く。まさにドミノ倒しを思わせる連鎖反応だ。

厄介な問題を他人に押しつけるかのようなこの連鎖により、サプライチェーン上の最後の企業にまでしわ寄せがいく。広告案件においてはどれだけの数の事業者に影響が及ぶか、考えてみてほしい。メディアマスの場合も、経営破綻した際の債権者企業はすべて、当該案件での他社に対する債務返済を免除された。

――パブリッシャーにとって不利な商慣行ではないのか?

そのとおりだ。シーケンシャル・ライアビリティによって、パブリッシャーは不利な立場におかれ、多くの人々が「きわめて不公平だ」と主張する状況に直面する。

たとえばメディアマスのようなアドテクベンダーの資金繰りが悪化した結果、サプライチェーン上の取引先にどんな影響が及ぶかを考えてみよう。メディアマスがパブリッシャーからの委託で買い付けた広告枠の代金を支払えない場合、当該広告の販売元は売掛債権を回収できなくなるが、広告取引を仲介した企業(債権者)に対する債務の支払義務を免除される。この債務免除権がサプライチェーン上の関係企業に連鎖的に波及し、パブリッシャーは結局、自社サイトやアプリに表示される広告の料金を取引先から回収できないまま、貸倒れ損失を被ることになる。

売掛債権を買い取り現金化する事業を手がけるオーレックス(OAREX)のエグゼクティブバイスプレジデント、ニック・カラービア氏は次のように語る。「アドテク業界におけるシーケンシャル・ライアビリティは必要性から生まれた契約条項だが、エコシステムを構成する多くの事業者にとって責任逃れの抜け道となっている。取引におけるリスク管理と債権管理の責任を回避する手段として利用している企業は多い」。

――シーケンシャル・ライアビリティを盾に支払義務から逃げる?

実のところ、シーケンシャル・ライアビリティ条項を利用して、パブリッシャーに対する支払いを意図的に回避しようとする企業は少なくない。それらの企業は、メディアマスの事案でいえば、同社の経営破綻の余波による打撃を吸収するのに十分なキャッシュを保有しながらあえて損失の穴埋めをせず、シーケンシャル・ライアビリティを盾にパブリッシャーに負担を転嫁する。こうした行動の公平性と倫理性について、パブリッシャーの立場を擁護する人々はとくに懸念を抱いているはずだ。

「当社の場合、今回の貸倒れによる損失を吸収するだけの財務余力がある」と語るのは、メディアマスからの未収金が140万ドル(約2億円)に上るというアドテク企業、GumGum(ガムガム)のエグゼクティブバイスプレジデントであるアダム・シェンケル氏だ。「業界ではよきパートナーとして行動するつもりだ、という発言をよく聞く。しかしそれらの発言は、口先ばかりで内実を伴わない場合も多い」。

「よきパートナー」は、あくまで建前的な表現ということか。

シェンケル氏の主張はこうだ。シーケンシャル・ライアビリティをめぐる業界内の議論はリップサービスやきれいごとに終始している。メディアマスの破綻による損失の全額または一部を吸収する意思を表明している企業でさえ、常に誠意ある行動をとるとは限らない。事態の収拾における自社の功績を大げさに言い立てながらも、実質的な貢献はごくわずかという、言行不一致の企業もある。

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